2013年5月27日月曜日

『夜と霧』

『夜と霧』新版
ヴィクトール・フランクル
池田香代子訳

ナチス政権下の強制収容所をリアルに描き、かつ心理学的に人間を分析をした世界的ベストセラー。

まず、 強制収容所の実情が詳しく書かれている。というのも著者自身の強制収容所での体験をありのまま描いているからである。当時の監視員からの仕打ち、また収容所の生活などは想像を絶するものだ。
しかし何より凄いのは、その極限状態でのヴィクトール・フランクルの分析力である。食べるものも十分に与えられず、病気を幾度となく患い、そして周りの人々が死んでいく中でもなお、人間を冷静に分析している。これに加えて驚くべきことに、監視員の心理まで分析していた。
 極限状態においても、学問への情熱を本能的に保ち続けるその姿勢は驚嘆に値する。

フランクルは極限状態から、人間とは何か、生きる意味は何かという問いに対する答えを見つける。
彼なりの答えは非常に力強く、悲痛なまでの経験によってその説得力は際立っている。特に未来の目的を持ち、なぜ生きているのかを常に考えることの重要性を強調している。
これら彼の答えは、現代を生きる人々が読んでも気付かされることが多く、若いうちに絶対に読むべき本であるといえる。

何より、自分の悩みや苦痛がいかに小さいものにすぎないか、痛感する。
これこそ自己啓発の為に読む本といってもいい。

最後に印象に残った言葉を紹介する。(これ以下はネタバレの可能性あり)

・あらかじめ精神的に、また人間的に脆弱な者が、その性格を展開していく中で収容所世界の影響に染まっていく - 117

・ 目的のない人間は、過酷極まる外的条件が人間の内的成長を促すことがあるということを忘れている。 - 121

・生きるとはつまり、生きることの問いに正しく答える義務、生きることが各人に課す課題を果たす義務、時々刻々の要請を充たす義務を引き受けることにほかならない。 - 130

・過去で”ある”ことも、一種の”ある”ことであり、おそらくはもっとも確実な”ある”ことなのだ。 -138



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